〜アメリカ時代〜

新たなるスタイルへの挑戦

初めての個展を成功させたインゲルは、世界各地で数々の個展を開き。訪れた町や建物や文化に触れ、ますますその完成に磨きを掛けていった。この頃から印象的〜抽象的な絵画が中心になり、新たなる絵画の可能性を模索し始める。その思いを胸に、1965年、ニューヨークに移り、10年間をアメリカで暮らした。

アメリカという独自な土壌から生まれた芸術的思潮が世界の美術をリードするようになった時代の真っ只中に身を置きながら、抽象的表現主義、ポップアート、コンセプチュアル・アート、彫刻建築家としても活躍したジョットや巨匠ピカソ、ブラックといった多くのアーティスト達や、ニューヨークという街が持つエネルギーに強く影響を受けた。

さらに、ニューヨーク州、ニュージャージー州、メリーランド州などにあるユダヤ教会から依頼を受け、協会のステンドグラスの政策をしたこともきっかけとなり、インゲルの中でアートに関する考え方が大きく変化していった。
それは、イスラエルやフランス時代に学んだ舞台芸術での動きによるフィーリング、ライトの効果、影の陰影、テクスチャー、ムードの出し方などの総合的な技術に加えて、新たなるデザインの道を示唆してくれるものであり、アートは「絵を描く」という状態だけではないというインゲル独自の絵画表現に対する本質を形成していくこととなったのである。


ニッサン・インゲル バイオグラフィ